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怪談

先日、バスに乗りました。
休日に加え時間帯も遅く車内はがらんどうと言っても差し支えない状態で、私は例に依って一番後ろの席にちょこんとふんぞり返り、辺りを睥睨しておりました。
そのバスは相当年季の入ったものらしく、薄暗い車内にあって壁の様々な場所にいつのものともしれない傷や汚れが見受けられ、とりわけその中の一つはパクリと開いた傷口のようで今にも血が滴り落ちそうな気配を醸し出しています。また、粗末な椅子の一つ一つを天井からのオレンジ色の電灯が照らしているものの、光沢を帯びた背もたれのカヴァーばかりがぬめぬめと明らんで、それは中央に細長く筋を表す通路と相俟ってあたかも灯籠を脇に据えた石畳の参道が果てもなく続いて行くかのようです。そのうちのひとつの席、
運転手の真後ろの席に彼はいました。
彼を視認した刹那、私は釘で打たれたかのように暫時硬直し、ほどなくそれが和らいでくると同時にひたひたと悪寒が背を這いあってくる感覚に襲われました。なにせ前方の男の異様な風体が抗いがたく私にそうさせるのです。
背中まであろうかというぼさぼさの黒髪を後ろで一本で結わえ、
赤いバンダナを巻き、黒いリュックを背負い、巨体を猫背に屈め一心不乱にゲーム雑誌のページをめくっています。

ふさわしすぎる。

私は卒倒しそうになりました。生気を吸い取られるのか長くは凝視できず目を逸らしました。第三次世界大戦を許せる度量をもってして他のすべてを容認するとしても、バンダナて。いかがなものかと。ちらりともう一度彼を見てみました。

ふさわしすぎる。

私は白目を剥きました。瘴気に当てられたのか頭が朦朧とします。
時折、雑誌を見つめ、『ん?あ~』等と上げる声は地獄から来て罪状を読み上げる悪魔のそれのようではなくちょっと美声なのが逆に心胆を寒からしめます。

車の揺れに併せて、明かりが車内を執拗に撫でまわす中、
彼は一層読み物に没頭し、
私は一層バンダナに煩悶しましたが、
払えども払えども雲霧の中に青天は見えず、橙の電灯を受けて一際色鮮やかな茜雲が神々しく、そして靄々と立ち込めるばかりでした。


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